あざみ野塾の苦しみ2 〜ブートキャンプ〜

大学入試の現状〜一般入試〜

 共通テストを見るとよくわかりますが、現在の大学入試で求められているのは、「短時間で大量の情報処理ができること」です。


 大学を「社会の即戦力を送り出すための教育の場」と位置づけるなら、それはそれとしてアリなのでしょう。
 高校生だけでなく、社会人も大学で資格を取ってキャリアアップしていけるように、大学のあり方が変わっていくことは悪くないはずです。

 英語の外部テスト利用――私立大学を中心に、かなり浸透しています。
 が、上位の資格をもっていても、所詮、実用英語ですから、まともな論文を読む能力はほとんどありません。
 これは、英語だけの問題ではありません。
 今の高校生、そもそも、日本語の論文(現代文の論理的文章)をまともに読めないです。

 もし大学を「学問の場」と位置づけるなら、、、

 本当にそれでいいといえるでしょうか。

大学入試の現状〜学校推薦型選抜/総合型選抜〜

 「今大学入試は、推薦・AO入試が5割を超えた」というフレーズをよく目にします。
 だから、狙うなら、推薦・AO入試です、、、か?

 たとえば、2024年早稲田大学政経学部。

 募集人数900人中、一般入試(共通テスト利用含む)は350人です。
 たしかに、5割を切っています。

 一方、総合型選抜(AO入試)は、帰国子女向けのグローバル入試30人、9月入学の「英語学位プログラム」100人。
 それ以外は、付属校、関連校からの内部進学者、指定校推薦。

 一般入試350人VS総合型選抜130人

 さて、どっちが受かりやすくみえますか?


 大学全入時代ですから、選り好みしなければ、推薦・AO入試でどこかに入れます。
 が、だからといって、どこにでも入れるわけではありません。

 結局、最後にものをいうのは、学力
 それは、どれだけ知識を身につけているか、ではなく、どれだけ〝学ぶ〟力をもっているか、ということです。
 それは、これまで〝学ん〟できた経験とその結果としての知識が培うものだからこそ、大学受験だけでなく、一生の〝学び〟を支えてくれます。

 部活をがんばること、課外活動をがんばることは、高校生活を充実させるために大切なことです。
 が、それをウリにするだけで受かる大学は、その程度の大学です。
 だって、大学は「学問の場」ですよ。
 プレゼン能力だけ鍛えても、学問する訓練が足りていない人が大学を活かせますか?

ブートキャンプ=新兵訓練所 

 〈あざみ野塾〉がめざしているのは、高校生が自ら学べるようになることです
 塾が要らなくなることをめざしている、ともいえます。

 「ブートキャンプ」とは、いわば自習です。
 それをスタッフが暖かく、厳しく見守っている、といえばいいでしょうか。

 新入塾生で、ちゃんと自習できる人はまずいません。

―プリントとの戦い―

 多くの学校で、大量のプリントが与えられていることはご存知ですか。
 「自分はこんなに丁寧に教えている」という、先生の自己満足と保護者向けのアリバイにすぎません。

 多くの高校生にとって、勉強とはプリント学習なのです。
 だから、そのプリントをどうするか、というところから指導がスタートすることもしばしばです。

 プリント学習に慣れている高校生は、英語の勉強に辞書を使ったりしません。
 教科書を見ることもしません。
 だって、何でもかんでもプリントに書いてくれているのですから。
 プリントの空欄を埋めれば、勉強したことになるのですから。

 本当にそれでいいのでしょうか。

―高校生の本分―

 塾独自の教材――というのは、塾にとってとてもメリットのある存在です。

 まず、塾として、指導のカリキュラムがしっかりあるフリができる。
 次に、それをやらせていると、しっかり指導したということにできる。
 さらに、教材費という名目で、お金を稼げる。

 塾にとっては、いいことづくめです。

 が、高校生の本分は、高校での勉強です。
 そうでないなら、高校に通う意味はありません。
 ならば、学校から与えられた教材をうまく活かすのが本道でしょう。

 それが本当に大変です。

 とにかくプリントの嵐。
 しかも、学校ごとにやっていることが違う。
 それに対応するのがどれほど大変か。

 「だから、個別指導塾」が正解だとは思いません。
 わからないところを丁寧に教えるだけでは不十分だからです。

 問題は、もっと手前にあります。
 「わからない」に至っている、その原因
 それを一緒に見つけていくのが「ブートキャンプ」です。

―中高一貫校のデメリット―

 中高一貫校は、根深い問題を抱えています。

 中高6年分の内容を5年で教える。
 そのために、削らざるをえないのは、、、基礎力を鍛える時間です。

 たとえば、数学。
 「数と式」という高校数学の入口がスルーされます。
 だから、計算ができない。計算ミスばかりする。

 さて、そういう高校生に対してどう指導すべきでしょう。

 〈あざみ野塾〉は、解けない問題を個別に指導するだけでなく、計算練習の演習枠を作って、徹底的に練習させています。
 もちろん、その指導も一人一人見ます。

―まちがった4技能―

 「読む」が中心だった英語教育は、「読む」「書く」「聞く」「話す」4技能すべてを重視するものに変わったはずです。
 が、実際に学校でやっていることは、「読む」の軽視
 じゃあ、他は充実しているのか、というと、、、かなり疑問です。

 たとえば、「聞く」。
 実は、英語の教材にはもともと豊富な音声データが付いています。
 だから、学校では対策したことになっているわけです。
 高校生はそれをちゃんと聴いている、と思いますか。

 〈あざみ野塾〉では、ただ聴く時間を設けるだけでなく、演習や個人指導で、リスニングのコツを丁寧に教えています。
 だって、共通テストの英語200点中100点がリスニングですよ。

リスニングの個別指導

 「単語がわからないから、文章が読めない」と英語の苦手な高校生はいいます。
 だから、単語集を黙々とやる。
 でも、そんなことでは何も解決しません。

 言葉は、意味がわかるかどうかではなく、使えるかどうかです。
 それは、日本語だろうが、英語だろうが変わりません。
 単語を覚えたいなら、実際にそれが使われている文章を読むべきです。
 単語がわからないから、文章が読めないのではなく、文章を読まないから、単語がわからないのです。

 高校生が手に入れられる最も良質な英文は、教科書です。
 教科書は、大勢の専門家や教師が練りに練って作った教材です。
 出てくる英単語をしっかり覚えれば、大学入試にはほとんど対応できます。
 なのに、活用されていない。

 だから、まずやるべきは丁寧なノート作りです。
 〈あざみ野塾〉では、単語も文法も日本語訳も確認します。
 そんな当たり前のことを、今どきの高校生はほとんどしません。
 なぜって?
 先生がプリントをくれるからです。

 辞書を引けない高校生も多い。
 というか、辞書をもっていない高校生すらいます。

 発音記号読めないので、発音もアクセントもダメ。
 どうやって「聞い」ているの?
 どうやって「話し」ているの? 

 例文など確認したこともない人がほとんどです。
 言葉は意味よりも使い方!

 英語教育は、「読む」中心から脱却して、さて、どこに向かっているのでしょうか。

 「ブートキャンプ」の目的は、「自習できるようにする」ことです。
 与えられた教材を黙々とこなすのではなく、自分で勉強できるようになってほしい、という、どこの塾もが言ってそうな泥臭いことです。

 でも、それが本当にむずかしい。

 辞書をまともに読めない子たち。
 単語の意味をつなげることで、英文を読もうとする子たち。
 公式に当てはめることが問題を解くことだと思っている子たち。
 プリントの穴を埋めることが歴史の勉強だと思っている子たち。

 そうした高校生の意識を変えることは一朝一夕にはいきません。
 大学生、大学院生スタッフが(一人を除き)卒塾生なのは、自分自身の体験を活かして指導してもらいたいからです。

 学校の教材を無視しない、という方針も、私たちの首を絞めています。
 塾の指導として独自の教材をさせるのは本当に楽です。
 でも、そうしたら、やらなければならない教材を増やしているだけです。
 高校生であるかぎり、学校の勉強を大切にしてほしい。
 その先に、大学受験があり、大学の勉学があり、一生の〝学び〟がある。
 と、〈あざみ野塾〉は考えています。

 もちろん、「だから、大学受験は学校の勉強だけで十分」とは考えていないので、「授業」が豊富にあります。
 「授業」は、あくまでも、大学受験に向けた実戦的なものです。
 が、それを受講すればどうにかなる、などとは思っていない。
 「ブートキャンプ」は、自習を通して、「どのように学ぶか」を一から見直そうとする試みです