講師を紹介します〜英語:稲葉義孝〜

 「講師を紹介します」では、〈あざみ野塾〉代表の大前が、〈あざみ野塾/あざみ野予備校〉の講師を(偏見を交えながら)紹介します。

 今回は、私の盟友を紹介します。

 稲葉義孝氏は、3月20日(2019年)急逝なさいました。49歳の若さです。
 私にとっては、まったく現実感のない喪失です。
 あまりにワーカホリックでしたから、いつか倒れるんじゃないか、とみんなにいわれていました。彼は、昨年、母校聖光学院に英語の教諭として招聘され、東大合格者をより増やすというミッションを負ったわけですが、それを大成功させた上での訃報でした。本当に彼らしいともいえます。

 実は、今年度、〈あざみ野塾/あざみ野予備校〉に出講しないことになっていたのに、ぎりぎりになって、出講してくれることになりました。
 互いにわかっているつもりになって、ごまかしてきたすれ違いがいろいろ溜まっていました。どこかで、ゆっくり話をしようと思っていたのに、それもかなわなくなりました。
 考えてみると、ずいぶん一緒に飲んでいません。
 これを書きながら、戻らぬ時間を実感し始めました。。。

 稲葉義孝氏の、稲葉先生の、稲葉さんの——どう書けばいいかわかりませんが——冥福を祈るとともに、彼のめざしたものを自分なりにじっくり考えてみたいと思っています。

【稲葉義孝】

・ 出身は、一橋大大学院商学研究科MBAコース。
 某生保会社を経て、予備校講師に転身しました。だからなのか、徹底的な実務的・実利的視点で物事を見ていて、彼の発言は、会社勤めの経験のない/経営センスのない私にはとても新鮮です。
 これまでの受験指導を買われて、2017年に彼の母校である聖光学院高等学校に英語教諭として招聘されました。彼のミッションは、成績不振者でも早慶に、そして、16年に70人以上出ている東大合格者(全国6位)をより増やすことだそうです。

 彼は、一言で言って、教材研究の鬼です。
 手に入れられるかぎりの過去問を手に入れて研究しています。そうした研究をもとにオリジナル教材を作成しているだけでなく、必要なら市販の教材もうまく使っているようで、教材研究の幅の広さに驚かされます。
 しかし、自分では参考書や問題集を作りたくないそうです。そんなものを書いて小銭を稼ぐ暇があったら、生徒を指導したいと自身のFBでのたまわっています。

 ある意味、「受験屋」に徹しています。
 大量の教材を徹底的に演習させる——「真剣な受験勉強」こそ「本物の勉強」に連なる、という信念で授業をやっています。
 高い志望をもつなら、勤勉でなければならないことを求めます。生徒が少しでもサボると、志望校と勉強態度のズレを平気でなじります。だからこそ、生徒は必死に付いていこうとします。
 褒めると伸びるタイプの生徒には合わないかもしれません。

 受験指導のための大学研究も一流です。
 文系理系を問わず、さまざまな情報を集めています。特に国公立大学の指導は、そこまで全国のことがわかっているな、と驚かされます。
 ここだけの話ですが、、、私も、塾生の受験指導に困ったら、彼に相談するようにしています。

 ただ残念なのは、典型的なワーカホリックで、生き方に余裕のないことでしょうか。

・ 彼との出会いは、某予備校です。AO・推薦受験指導で有名な予備校でしたが、私たちは、そこで一緒に、国公立大受験の指導を主導していました(その予備校が宣伝していなかったのでまったく知られていませんでしたが、私たちがかかわっていた頃、国公立大合格者はAO・推薦合格者とほぼ同数でした)。
 彼と私は、表面的にはかなり理念・信念が違うのですが、一緒に仕事をしているうちに、めざしているものが結局同じであることがわかりました。たとえば、勉強には徹底した基礎学習が必要なこと、基礎学習は「より早く、より正確に」でなければならないこと。
 「ハミガキの勉強」、「センター重視」など、〈あざみ野塾〉の理念や指導方針は、かなりの部分、彼との関係の中で生まれました。