ポスト3・11〜その1〜

 「ポスト3・11」を直訳すると、「3・11以後」になります。

 2011年3月11日、東日本大震災は起こりました。多くの人の命が地震や津波で奪われ、福島第一原発で未曽有《みぞう》の事故が起こりました。特に原発事故は、事故自体が終息したとしても、その影響が今後ずっと続きます。

 その意味で、3・11以後を語る上で避けられないのが、原発の存続問題です。本書はその是非を語る立場にはありませんから、そのつもりはありませんが、本書に登場するさまざまな概念を使ってできるかぎり考察してみましょう。

 まず、存続を認めるにしろ、認めないにしろ、3・11以前と以後では原発を巡る枠組み《パラダイム》自体が変わるはずです。

 ドイツでは、フクシマをきっかけに22年までに原発を廃止することを決めました。日本が今後どうするかはまだわかりませんが、もし存続するにしても、3・11以前と同じ論理が通用するとは思えません。

 かつて、石炭や石油という化石燃料の枯渇が叫ばれていました。今では、人間の産業活動に伴う二酸化炭素の排出が問題視されています(それが、地球を温暖化させるといわれていますから)。原子力は、そうした心配の少ないエネルギーとして注目されていました。

 原発は、安全で(!)安価な電力を手に入れる手段だったのです。

 でも、それは本当なのでしょうか?