あり方の違い
大学選びの際、国立大学/公立大学/私立大学、のいずれを志望するか、というのは、大きな分岐点です。
では、そもそものところ、これら3つの大学はどう違うのでしょうか。
「学問の場」としての国立大学
大学のあり方として見た場合、国立大学は「学問の場」であり、私立大学は「教育の場」だといえます。

現に、ノーベル賞は、国立大学出身者だけです。
大村智氏が東京理科大出身だといわれますが、大学院が東京理科大で、大学は山梨大学です。
山中伸弥氏は公立大学出身だといわれますが、大学院が大阪市立大学(現大阪公立大学)で、大学は神戸大学です。
※ ちなみに、出身高校も、2人を除き、国公立高校。
単純にいって、もし研究畑に進みたいなら国立大学をめざすべきです。
これは、科学研究費や民間企業などからの資金提供額でもわかります。

【25年科学研究費採択件数ランキング】
私立大学は、早稲田大学13位、慶応大学14位、順天堂大学18位。公立大学は、大阪公立大学16位。
その上には、地方国立大学である、広島大学や岡山大学がいることに注目。
(文科省『令和7年度科学研究費助成事業の配分について』より)

【23年国内外の民間企業からの研究資金等受入額】
私立大学は、7位慶応大学、9位順天堂大学、14位早稲田大学。
このデータからも、慶応大学は、産業界との結びつきが大きな大学だとわかる。
(経団連/経産省/文科省『大学ファクトブック2025』より)
上のようなランキングでは、一般的に医学部のある大学が上位になるので、医学部のない早稲田大学はかなり検討しているといえます(順天堂大学は医学部中心の大学)。
が、いずれにしろ、多くの研究費が国立大学に流れていることは否定できません。それがノーベル賞を生んでいるわけです。
「教育の場」としての私立大学
文科省の「教員に関するデータ」によると、次のような指摘がされています。
・ 大学規模別に本務教員1人当たりの学生数の分布をみると、特に私立において、規模の大きい大学ほど1人当たり学生数が多い傾向が見られる。
・ 授業担当時間数について、私立で国公立と比して多くの授業時間を担当している教員の割合が多い。
私立大学、特に大規模校では、教員がうけもつ学生数が多く、授業数も多いので、教員の役目は、学問研究より、大勢の学生に授業をする、いわゆるマス教育が中心です。
一方で、大学の制度として、いろいろな資格がとれるコースが用意されていたり、大学/学部をあげて就活をサポートしてくれたり、と、キャリア教育が充実しているのも私立大学です。
私立大学は、就職するにしろ、起業するにしろ、学生のキャリア形成をサポートする「教育の場」だといえます。
公立大学は?
文科省の「教員に関するデータ」によると、、、
・ 本務教員1人当たり学生数の分布をみると、国立は9人以上12人未満、公立は6人以上9人未満、私立は21人以上24人未満にピークがある。
教員1人当たりの学生数は、私立大学が圧倒的に多く、公立大学が一番少ないことがわかります。
一部を除き、多くの公立大学は、その地域に根付いた〝小さな〟大学です。教員と学生との距離が一番近いのが公立大学です。
だから、公立大学は、こじんまりとした、面倒見のいい「教育の場」といえます。
そして、、、
公立大学には、(小さいからこそ)個性の強い〝尖った〟大学が多い。
たとえば、会津大学(福島)は情報処理の技術者を育成する大学として、国際教養大学(秋田)は外国語教育で最先端をいく大学として、非常に評価の高い大学です。
ちなみに、「THE世界大学ランキング2026」によると、会津大学は、日本の大学全体で14位(公立大学では1位)。上にいる私立大学は、10位順天堂大学、12位慶応大学しかありません。
学費の違い
国公立大学は授業料が安い、というのが常識でしょうか。
図式化すると、、、

国立大学は一律?
国立大学の授業料は、文科省の省令で標準額が年535800円と定められています(入学料は282000円)。が、各大学の判断で、1.2倍(642960円)まで引き上げることができます。
19年の東京工業大学(現東京科学大学)と東京芸術大学の値上げに始まり、26年は、国立大学85大学中10大学が引き上げます。
【授業料を値上げしている国立大学一覧】
19年〜 東京工業大学(現東京科学大学)、東京芸術大学
20年〜 東京医科歯科大学(現東京科学大学)、千葉大学、一橋大学
24年〜 東京農工大学
25年〜 東京大学
26年〜 名古屋工業大学、埼玉大学、山口大学、電気通信大学
公立大学もさまざま
公立大学の学費は、国立大学の標準額(535800円)と同じか、その前後であることがほとんどですが、例外がいくつかあります。
【授業料が標準額から大きく離れた公立大学】
国際教養大学:696000円
埼玉県立大学:621000円
静岡県立農林環境専門職大学:322300円(安い!)
(「公立大学基礎データ(2024年学生納付金調査結果)」より)
公立大学の特徴は、入学料です。
入学料は、地域に根ざした大学らしく、出身が地域内か地域外かで、大きく変わります。地域外は、地域内の2倍であることがほとんどです。
極端な例では、福島県立医科大学(内28200円/外846000円)、奈良県立医科大学(内282000円/外802000円)、和歌山県立医科大学(内282000円/外752000円)。医学部でこのような傾向が強いのは、公立医科大学が地域医療を支える医者の育成を目的としているからでしょう。
ちなみに、大阪公立大学は、大阪府に3年以上住んでいるなどの条件を満たすと、授業料などが全部または一部免除されます。
私立大学は学部によって全然違う!
私立大学は、文系/理系、そして医歯学部かどうかによって、大きく変わります。

【私立大学学費平均額】
文系<理系<<<医歯系
(文科省「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について」より)
上のデータの私立大学授業料の平均値(959205円)と国立大学の標準額(535800円)を用いると、私立大学の授業料は、国立大学の1.8倍です。
が、実際は、大学、学部学科によって大きく変わります。
文系/理系
入学料は変わりませんが、実験や実習の多い理系は、文系よりも授業料が高くなります。
上のデータでは、文系の授業料(827135円)と理系の授業料(1162738円)なので、理系は文系の1.4倍です。
医(歯)学部
上のデータで見ても、医歯学部は、入学料も授業料も突出して高く、合計では、一般的な理系学部と比較しても、3倍超かかります。
医学部に限定すると、最も安い国際医療福祉大学で6年間で1850万円、最も高い川崎医科大学なら4700万円超かかます。私立大学医学部の平均値は約3200万円です(メディカルラボ『2024年度用 全国医学部最新受験情報』による)。
ちなみに、国立大学なら350万円弱です。
さらに、私立大学の場合、(強制ではありませんが)そこに寄付金が求められます。
医学部ほど、国公立大学と私立大学の落差(格差?)が見られる学部はありません。